ビジョン54とプレイボックス・シンクボックスのコンテンツでは、「ビジョン54」独自の「ボックス」という考え方について紹介しています。
ビジョン54とは、スウェーデンの女子プロ、ピア・ニールソンとアメリカのコーチ、リン・マリオットにより提唱されました。
自分の可能性を信じることで、自らの中に壁を作ることなく、誰もが最大限の潜在能力を発揮できるという考え方と、それを実現するメソッドの総称。
「ボックス」は、ビジョン54の中心となる概念です。
雑誌「ゴルフトゥデイ」で、渡邊正子コーチがこの「ボックス」について詳しく解説されていました。
ポイントをまとめて紹介します。
(このコンテンツはGOLF TODAY 2018年4月号(Amazon)32~41ページを参考にしています。サンプルを読む・Kindle版あります)
スイング時点では考えない
まずは「ビジョン54」について、渡邊コーチの解説をまとめます。
このサイトで以前紹介した説明よりもさらに詳しく、実用的です。
ゴルファーは、いろんなことを考えながらスイングしています。
考えることと打つことが混同してしまうのがミスの原因で、2つをセパレートすることが重要、というのが「ビジョン54」の発想です。
54は18ホールすべてバーディのスコア。
もちろんこのメソッドを象徴する数字なので、人それぞれの54があっていい。80台が目標ならば85でも88でもいいということです。
打つ前にあれこれ考えるのは必要なことですが、それがいざスイングの段階でもいろいろ考えているのはNGなのです。
必要なことを考えた後は、気持ちを切り替えて何も考えずに打つのがキモになります。それを助けるのが「ボックス」の考え方です。
次に、ビジョン54の根幹をなす「ボックス」の概念についてまとめます。
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三つのボックス「シンク」「プレイ」「ヒーロー」
ビジョン54では、三つの”ボックス”という考え方をします。
シンクボックス(Think Box)
Think=考える、思考することに集中する箱。
ボールを打つ前はこの箱に入り、ボールに打つにあたって必要な準備をやりきって決断します。
--ディシジョン・ライン--
プレイボックス(Play Box)
Play=ボールを打つ、ショットに集中する箱。
シンクボックスで決断したことを実行するのがプレーボックスです。ここに入ったらターゲットに対して打つだけ。
ヒーローボックス(Hero Box)
どんな時でもフィニッシュでバランスよく立つ。
打ち終わった後のルーティンもとても大事。ヒーローボックスではミスは引きずりません。
渡邊コーチの解説です。
シンク・ボックスとは文字通り考える箱。
ここではボールのライや風の見極め、気温や湿度などの分析、攻め方や球筋の決定といった左脳を使う作業を行って、来るべきショットに備えます。
シンク・ボックスとプレー・ボックスの間にはディシジョン・ラインという仮想の線があり、そこを越えたら何も考えない。
プレー・ボックスという箱に入り、ターゲットに集中して感性で打つという右脳の作業に徹します。
こうすることで考えることと打つことがセパレートされ、ショットに集中できるというわけです。
上では「ヒーローボックス」を挙げていますが、このサイトでこれまでに紹介しているのは「シンク」「プレー」の二つだけでした。
ヒーローボックスとはどういうものなのでしょうか?
「ヒーローボックス」は”打った後のルーティン”ミスをひきずらない
「ヒーロー」は打ち終わった後のボックスです。どういう「箱」なのか、渡邊コーチの解説です。
もう1つ付け加えると、打ったあとにはヒーロー・ボックスに入りたい。
これは打ったあとのルーティンとも言えるもので、例えば打ったあと結果に関係なく数秒静止し、ミスしてもネガティブな言葉は吐かないようにする。
事実を受け入れ平常心を維持することでミスを引きずらない効果が望めるので、アマチュアにはぜひ試していただきたいと思います。
ヒーローボックスではミスを引きずらず、次のショットに集中します。
打つ前のルーティンを意識するゴルファーは多いですが、「打った後のルーティン」はあまり実践されていないのではないでしょうか。
次のショットに雑念を入れない、という意味では、ショット前のルーティンと同じくらい重要と言えそうです。
シンクボックスで考えること(所要時間はおよそ20秒)
ここで、順序としては前後してしまいますが、シンクボックスで考えることを詳しくまとめます。
上で紹介したように、シンクボックスは打つ前に必要な準備を完璧に整え、ショットに集中できる状態を作るための場です。
「準備を整える」といっても、シンクボックスにいるのは長くても20秒ほどです。渡邊コーチの解説です。
あまり長い時間シンク・ボックスにいるのはよくありません。迷いが生じますしスロープレーにもなるからです。
時間にすると、シンク・ボックスに入り、プレーボックス移ってクラブを振り切るまでは30秒が目安。
アドレスしてから振り切るまでは数秒ですから、シンク・ボックスにいるのは長くても20数秒ということになります。
その20数秒間で以下のようなことを考えます。
1 ボールのライをチェック
ラフはもちろん、フェアウェイでもボールが沈んでいることがあります。
普通に打てる状態かを判断してクラブ選択や攻め方を決めます。
2 風を読む
体で感じる風だけでなく、ターゲット付近の風にも注意します。
フォローやアゲインストはクラブ選択、横風は狙い方に影響を及ぼします。
3 クラブを選ぶ
ライと風を読んだら、打つ距離を決めます。そこではじめてクラブが決まります。
最適なクラブ選択をするためには数本は持って行く必要があるでしょう。
4 球筋を決める
状況を分析し、どのような打ち出し方向で、どんな球筋にするかを決定します。
「どんな球筋で攻めるか」の球筋イメージは絶対に省略してはいけません。
5 素振りをする
素振りをする場合は、シンクボックスの中で行います。
目安は2回で、それ以上の素振りは迷いが生じるリスクがあります。
全ての決断はシンクボックスの中で終えるのが基本です。
以上の1~5をふまえてプレーボックスに移ります。
とはいえ、これだけのことを20数秒で終えるのは厳しいですよね?
このわずかな時間で打つ前の準備を完璧にするのは無理なので、ボールのライや風のチェック、球筋の決定、クラブ選択まではシンク・ボックスに入る前にやっておく、あるいはボックスに入るまでの準備動作と考えましょう。
ここまでやっておけば、シンク・ボックスでの作業がターゲットの設定や球筋のイメージなどに絞れます。
リズムよくプレー・ボックスに移り、ショットに集中できる要素が揃いやすくなります。
(渡邊コーチ)
シンク・ボックスに入る前に、ちょっと考えておくわけです。
1(ライ)の把握はすぐ終わりますし、2(風)はプレー前にも確認できます。
3(クラブ)の選択も、1と2はすでに把握済みなので、あと勘案する要素として加えるのは残りの距離だけ。
おそらく最も迷いがちで、時間がかかるのは球筋のイメージではないでしょうか。
上にも書いたように、これは絶対に省略してはいけない行程です。
これまでのプレーで以上のプロセスを意識したことがなければ、かなり大変な作業に感じられるかもしれません。
しかし一打ごとに意識するよう心がければ、必ず慣れてきて大変ではなくなってきます。
そのうち無意識にプロセスをこなせるようになり、三つのボックスが完全に自分のものになるのではないでしょうか。